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「源氏供養」の舞台展開

​ここでは「源氏供養」を4つの場面に分け紹介します。

1、安居院法印(ワキ)と従僧(ワキツレ)の登場

 お囃子方・地謡が着座すると次第がはやされ、安居院法印が登場する。彼は京都に住んでいるが、常々石山寺の観世音菩薩に参詣しており、今日も石山寺に向かう旨を語る。

2、里女(前シテ)の登場

 法印が石山寺に着くと一人の里女が現れ、自分は石山寺に籠って源氏物語を書いたが、その主人公を弔わなかったので今も妄執に囚われてしまっているので、助けてほしいと頼む。法印が頼みを快諾すると女は消える。(中入)

3、所の者(アイ)の登場

 所の者が登場し、紫式部や源氏物語の事を語り、法印に供養をするように勧める。

4、紫式部(後シテ)の幽霊の登場

 法印が弔っていると紫式部の幽霊が現れ、願文を法印に渡し、法印の勧めで舞を舞う。紫式部が舞いを舞うと、仏の功徳を受けて、実は紫式部が石山寺の観世音菩薩の生まれ変わりであり、この世の儚さを衆生に教えるために源氏物語を書いたと明かし、法印の夢が覚めるのと共に消える。

​​●ひとこと解説

 源氏供養とは中世に流行った儀式で、源氏物語の巻を順番に燃やすことで、源氏物語に登場した人々、作者の紫式部の魂を弔う事です。能の「源氏供養」はこの儀式を舞台化した作品と言えます。そのため後半のクセでは源氏物語の巻名が謡いに読み込まれています。

●クセの詞章

地「そもそも桐壷の。夕べの煙速やかに法性の空に至り。箒木の夜の言の葉は遂に覚樹の花散りぬ。空蝉の。空しきこの世を厭いては。夕顔の。露の命を観じ。若紫の雲の迎え末摘花の台に坐せば。紅葉の賀の秋の。落葉もよしやただ。たまたま仏意に逢いながら。榊葉のさして。往生を願うべし。

シテ「花散る里に住むとても

地「愛別離苦の理 免れがたき道とかや。ただすべからくは。生死流浪の須磨の浦を出でて四智円明の。明石の浦に澪標。いつまでもありなん。唯蓬生の宿ながら。菩提の道を願うべし。松風の吹くとても。業障の薄雲は晴るる事さらになし。秋の風消えずして。紫磨忍辱の藤袴。上品蓮台に。心をかけて誠ある。七宝荘厳。真木柱のもとに行かん。梅が枝の。匂に移るわが心。藤の裏葉に置く露の。その玉鬘かけしばし朝顔の光頼まれず。

シテ「朝には栴檀の。陰に寄生木名も高き

地「官位を。東屋の内に籠めて。楽しみ栄えを浮舟に譬うべしとかやこれも蜻蛉の身なるべし。夢の浮橋をうち渡り。身の来迎を願うべし。南無や西方弥陀如来。狂言綺語を振り捨てて紫式部が後の世を。助け給へともろともに。鐘打ち鳴らして回向も既に終わりぬ。

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