「心より心に伝ふる花」を目指して
「西王母」の舞台展開
ここでは「西王母」を5つの場面に分け紹介します。
武田尚浩家では勤めていないので、写真なしで紹介します。
2020年7月9日 観世会荒磯能にて武田祥照が演能予定
1、皇帝と臣下(ワキ・ワキツレ)の登場
囃子方、地謡方が着座すると一畳台の作り物がワキ座に出される。皇帝が登場し、その意向が国の隅々まで行き渡り、人々が平和を享受していることを謡う。
2、女(シテ・ツレ)の登場
一声にて登場した女は桃の花を持ち現れ、桃李は物を言わずともそこに人が集まってくるように、聖人君主のもとには多くの人が集まってくると謡う。
3、女は桃の花を献上し、消える。
女は西王母の桃の園に3千年に一度実るという桃を皇帝に献上し、この桃は皇帝の治世が天道に叶い、実ったものであると伝える。そして自分は西王母であり、再び真の姿で現れると言って消える。
4、官人(アイ)の登場
皇帝は官人を呼び出し、西王母の事を尋ねる。
5、西王母と侍女(後シテ・後ツレ)の登場
すると天から妙なる音楽が流れ、西王母とその侍女が現れ、皇帝に桃の実を献上する。そして西王母は太刀を佩き、花の衣を翻し、舞を舞い、春風に誘われるように消えていった。
●ひとこと解説
西王母は古代中国の崑崙山に住むと言われる仙女の中でも最高位の仙女です。
蟠桃園という桃の園を管理しており、その桃は三千年に一度実をつける木、六千年に一度実をつける木、九千年に一度実をつける木が植わっています。三千年に一度の実を食べると仙人になると言われ、六千年に一度の実を食べると長生不老に、九千年に一度の実を食べると天地がある限り生きる身となると言われます。そして、これらに桃が生ると仙人を集めて「蟠桃会」という宴を催すと言われています。能「西王母」はこの蟠桃会を舞台上にて再現することが一つの目的とも考えられ、桃の花に戯れ舞う華やかな曲です。