「心より心に伝ふる花」を目指して
「大典」の舞台展開
ここでは「大典」を3つの場面に分け紹介します。
武田尚浩家では演能していないので、写真なしで掲載します。
1、帝の臣下(ワキ)と従者(ワキツレ)の登場
囃子方、地謡方が着座すると次第という登場音楽によって帝の臣下とその従者が登場し、この度大正天皇の御大典が行われ、その奉告の為に平安神宮へと向かう旨を語る。
2、天女(ツレ)の登場
神前にて世界の中で日本は神国として平和であり、大嘗祭で納められた稲穂は大きく実っており、供えられた新酒は香しく、参加した臣下たちが「千代に八千代に」と寿ぎ、五節の舞や音楽が奏でられた様は大変に素晴らしく、涙が抑えられなかったと寿ぐ。すると社殿より妙なる音楽が聞こえてきて、天女が現れ、舞(天女の舞)を舞う。
3、天津神(シテ)の登場
天女が舞を舞うと、御殿が振動し、天津神が現れる。この国は開闢より八百万の神が守護しているので、外国に攻められることがなく平和で、明治天皇の御代になって開国をしても平和の道を進み、民を慈しむ政治を行われた。この志を引き継いだ皇子の今上天皇も文武に優れており、この御代を国民が讃えている。これを聞いて神である私も御代を讃えるために現れたといって、舞(神舞)を舞う。聖代が永遠に栄える事を寿いで終曲となる
●ひとこと解説
「大典」とは天皇のご即位に関連する行事を指す言葉で、大正天皇ご即位の記念に作曲された曲です。作詞は藤代禎輔師、節付けは24世観世宗家観世元滋師です。
当時の皇国史観が反映された曲となっているため、大正天皇の即位関連で行われて以来、天皇の即位の際に行われるほかは上演の少ない曲です。令和元年には今上天皇のご即位を記念して日本各地で行われました。
詞章は修辞の連なりで、祝言第一を意識した曲です。
これを改作した「平安」は京都薪能で上演されています。